野矢茂樹「論理学」の第一章を読み終えました.正確には,序章と一章ですね.
簡単に感想を書いていきます.今後,この本を読む方の参考になればと思います.
序章
自分のノートを見る限り,大筋としては「論理学とはどのようなことを学ぶのか」と「言語と論理は切っても切れない」という二つの主張が見られた.
筆者は,読者が一度考えてみるとよいと思っている議題の内容を論題として出していて,それらの問題は正解がある問題ではない.中には答えがあったり,筆者が伝えたいことがあったりする論題があるが,それについては巻末に解説が載せてある.序章の論題については筆者の開設がついているものはないが,これから論理学を学ぼうとしている人としては立ち止まって考えると面白い問題ばかりだったと思う(だから筆者が書いたんだろと言われれば,確かにそうですとしか言いようがない).
自分の場合,もともと言語学に興味があって論理学を学び始めたので,序章の論題を解く際のアプローチが明らかに言語側から訴えていた.これらの論題に自分なりの考えをまとめることで,読者は論理学を学ぼうとする人として今の自分の立場を振り返るいい機会になるのかもしれない.
1-1:命題論理の意味論
一章では命題論理というものを学ぶ.自分は何を学んだかをかなり大雑把に言うと,「真偽を考えることのできる命題について,それを記号として表すとどうなるか.そしてそれは日常言語とどう違うのか.」ということになる.一章の大きな構成は,一節で命題論理の意味論をやり,二節で命題論理の構文論をやるということになる.
一節の意味論では,多くの人が初めて論理学と聞いて思い浮かべる内容(?)のものになっている.「意味論」という名前は,言葉の意味を考えて記号に焼き直すことから,その様に命名されたのだろう.意味論という言葉の意味をあまり気にせずとりあえず学習し,二節で構文論を学ぶことで,自然と意味論という命名も理解できると思う.日常の言葉から命題論理への橋渡しをかなり丁寧にしてくれているように感じた.論理学と初めて聞いた時は敷居が高かったが,この橋渡しのおかげですんなり入門できた.特に,本に書いてあることを素直に受け入れないひねくれ者の自分のような読者は,よく書かれている内容に文句をつけるが,そのほとんどの文句は道元と無限という架空(?)の人物の会話にほとんど書かれているので,かなり腑に「落とされた」感じがした.
そのような丁寧な橋渡しもしつつ,原子命題,真理関数,二値原理,トートロジーと矛盾式,論理式などの定義を,ここで述べている.自分は順番に丁寧に読み進めれば突っ掛かる部分は特になかった.
1-2:命題論理の構文論
公理系,導出規則,定理などがどのようなものなのかを与え,いくつかの公理系における定理の証明などを直接手を動かしてみると良い章であった.「構文論」という名前は意味論で一度記号に焼き直した体系を,意味抜きにして構造だけに着目したからであろう.例として,ユークリッド幾何学を用いて構文論への導入を行っている.意味抜きの学問体系の意味は,ビアホール学という例を示してくれて面白かった.ほかにも群論を例に挙げていて,どんな人でも興味をもって読めるようになっている.
「物事の一般化」ということについて考えたことのある人は,この章はすんなり理解できると思う.定理の証明は実際手を動かすのがいいと思う.自分も,理解したと思っていた内容だったのに意外とできなかったりするものだったが,問題を 4 問ほど解いてみるとコツはつかめてくる.コツがつかめると,章末の練習問題も割とすんなり解けるので,モチベーションを保つため是非とも紙とペンをもって解いていただきたい.